SDGs対応の一環として倉庫業務を効率化、BCP対策を強化 |富士貿易株式会社

富士貿易株式会社

本 社:神奈川県横浜市
設立:1953年
資本金:1億円
売上高:306億2800万円(2019年3月期)
従業員数:210名(グループ全体:910名)
事業内容:船舶用マリン・サプライ、酒・食品の輸入、海外プラントへの機器輸出など
http://www.fujitrading.co.jp/

アジア、ヨーロッパ、南北アメリカの各地に拠点をもつ世界屈指のマリン・サプライヤー。2023年に創業70年を迎えるのを機に、新社屋建設の計画を進める。

世界屈指のマリン・サプライヤー
酒・食品類の輸入・販売も展開

1953年に神戸で産声を上げた富士貿易は、外国航路を行き来する大型船舶への日用品や食料品、船舶用部品などの供給で事業を拡大してきた会社である。

現在、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカの17カ所に拠点を設け(現地法人・駐在員事務所)、地球全体をカバーするマリン・サプライヤーとして、大型貨物船や巨大タンカー、外洋クルーズ船などの運航に欠かせない存在となっている(図表1)。

得意先としては、海外の大手船会社や日本を代表する貨客船会社など300社以上が名前を連ね、5000隻以上の船舶が同社のサービスを常時利用中である。

また1980年代半ばからは、グローバルなネットワークを駆使して酒・食品類の輸入にも進出し、日本におけるワインブームやバーボンウイスキーブームの火付け役になったことでも知られる。

システム面では、1970年にIBMのシステム/3を導入し、それ以降、システム/38、AS/400、System i5と、IBMミッドレンジ機を中心に基幹システムを運用してきた。現在は、昨年(2019年)末に切り替えたPower 914(OSはIBM i 7.3)を利用する。

基幹システムは、中心となる販売管理システムをシステム/3の導入時にRPG Ⅱで自社開発。その後、システム/38への切り替え時にRPG Ⅲで書き換え(1985年)、さらに2008年のシステム刷新時にRPG Ⅳを使って全面改築し、その後部分的な改修を続けながら現在に至っている。

コロナ以前にノートPCを配布
在宅勤務にも即座に移行

同社はここ数年、SDGs(持続可能な開発目標)への対応を目標として掲げ、その一環として、倉庫内作業の効率化や事業継続基盤の強化に取り組んできた。そして、それらの活動にひと区切りをつけた直後に、新型コロナによる非常事態に直面することになった。

「グローバルな製造業の多くが生産を縮小したり海外への渡航が厳しく制限されるようになったことから船の運航が大幅に減少し、当社のマリン・サプライ事業にとっては大きな向かい風となっています。その一方、酒・食品類の輸入事業は国内の“巣ごもり消費”の影響で、倉庫が空になるほどの忙しさが続いています。

当社は新型コロナの流行以前に全社員にノートPCを配布し、業務の効率化、事業継続基盤の強化を進めてきました。それが功を奏して在宅勤務へもすぐに切り替えられ、業務を継続できています」と語るのは、常務取締役の小池雄三氏である。

iPadでバーコードを読み取り入出庫管理
LongRangeでIBM iとの連携を実現

同社のマリン・サプライ事業は、顧客の船がどこにいても、顧客の求めに応じて世界各地の主要港で即座に納品できることが特徴である。そのために常時5万点を超える商品を世界各地で在庫し、即納できる体制を敷いている。

サプライ品には、乗客・乗員の毎日の生活に欠かせない日用品や食料品のほかに、船舶の安全な運航に必要な部品・装置類などもあり、じつに多岐にわたる。

同社ではそれらサプライ品の倉庫への入出庫・在庫管理を、従来はすべて手作業で行ってきた。

まず入庫では、仕入先への注文品が倉庫に到着すると、発注した商品(部品)の情報を基幹システムからラベルに出力し、それを個々の商品(部品)に貼り付けて倉庫の棚に収納。次にIBM i上の倉庫管理システムへ手動で入力してきた。

出庫では、顧客からの注文品のリストを基幹システムから紙にプリントアウトし、目視で注文品のピックアップと検品を行い、倉庫管理システムに手動で反映させてきた。

「しかし、手作業ゆえのミスが起きたり、繁忙期には従業員の肉体的・精神的な負担がかなり大きくなるなど、課題が顕在化していました。また入庫時のラベル出力では、実際には着荷しなかった商品のラベルも打ち出されるなど、無駄もいろいろと目立っていました」と、小池氏は従来の状況を説明する。

デバイスはiPadにすぐに決定
開発言語はPHPかRPGか

その倉庫作業の効率化プロジェクトを、同社は2018年半ばにスタートにさせている。当初、システム化のイメージとして描いたのは、基幹システムの発注データをバーコード付きのラベルで出力し、そのバーコードをスマートデバイス付属のカメラアプリ(またはバーコードリーダー)で読み取り、それをアプリに取り込むことによって倉庫管理システムと連携させるという仕組みである。これを実現すると、基幹システムへの手入力やその他の作業を大幅に削減できる。

実装方法の検討を進めるなかで、スマートデバイスをiPadにすることは、すぐに決まった。表示スペースが大きく文字が見やすいからである。しかし、IBM i上の倉庫管理システム(RPG Ⅳベース)とiPadアプリケーションとの連携方法については、すぐには決まらなかった。

開発言語の候補として挙げられたのはPHPとRPGの2つである。これは、開発パートナーのアイ・ディー・シーがPHPエンジニアとRPGエンジニアを多数擁していたという事情による。アイ・ディー・シーは、富士貿易の情報システム部門が1989年に独立してできた会社で、独立後も富士貿易のシステム構築・運用を一手に担ってきた経緯がある。

開発・保守の生産性は
RPGのほうが高い

半年に及ぶ検討の末に、開発言語はRPGに絞ることとし、iPad用アプリケーションの開発ツールとしてランサ・ジャパンのLongRangeの採用を決めた。

LongRangeは、RPGやCOBOL、CLのスキルだけでスマートデバイス用のネイティブアプリを開発できるツール。「Long Rangeスタジオ」と呼ばれるフレームワークでメニューやフォームなどのパーツを定義し、IBM iと連携するフォーム部分をRPGやCOBOLで記述するだけでネイティブアプリの開発が行える。

「PHPを使って開発するにしても、連携のためのプログラミングやセッション管理などのスキルは必要です。そうであるならばRPGのほうがはるかに開発・保守が容易で、LongRangeを使えばさらに生産性は高くなります。RPGに軍配が上がりました」と、アイ・ディー・シーの小林慎二 取締役は製品選定の理由を語る。

作業ミスが激減
現場担当者から感謝の言葉も

2019年3月にLongRangeを購入して開発に着手。同9月には入庫管理用システムの開発を終え、神戸にある船舶部品用倉庫の1つでサービスインした。

構築したシステムは、基幹システム上の発注データから部品ごとのバーコード付きラベルを倉庫内のZebra製バーコードラベルプリンタで出力し、それを手作業で個々の部品に貼付。そのバーコードをiPadのカメラアプリまたはBluetooth接続のバーコードリーダーで読み取るとiPadアプリケーションに取り込まれ、IBM i上のLong Rangeサーバー経由で倉庫管理システムに反映されるという仕組みである(図表2)

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本記事はi Magazine 2020 Summerに掲載されたものです
© i Magazine2020

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