ビジネス・インテリジェンスとAI ~AIがビジネス分析にもたらす革命~

AI はデータ分析を行った後、分析に基づいた提案を導き出せるという意味で、ビジネス・インテリジェンス (BI) と相性が良いです。ただし、BIに有益な AI の活用方法やBI 分析と AI を 統合させる具体的な事例を正確に把握することは簡単ではありません。このブログでは、AI が BI に与える影響、そして、ビジネス・インテリジェンスで AI を活用する方法について解説します。

重要なポイント

  • AI が導入されたシステムでは、システム自体が学習するため、より多くのデータを提供することで、次第に分析能力が向上します。
  • AI は、リスクの軽減、効率化、サプライチェーン管理、顧客理解など、さまざまな分野で利用可能です。
  • LANSA BI に代表されるIBM i ビジネス・インテリジェンス・ソフトウェアは、ユーザーはAIを駆使することで、データに基づいた意思決定が行えるため、業務改善を促進できます。

ビジネス・インテリジェンスでAIを活用するメリット

BI システムを AI がサポートすることで、より多くのデータを取り扱えるようになり、複雑な分析や柔軟な分析が可能になります。

大規模かつ多様なデータセットを分析

AI を活用することで、BI システムでは、より幅広い種類のデータ分析が可能になります。テキストや.csvファイルの分析だけでなく、例えば以下のようなデータから AI によるインサイト (洞察) を導き出すことができます。

  • イメージ
  • ビデオ
  • 音声ファイル
  • アンケート調査の回答データ (構造化されていないもの)

また、IoT システムやソーシャル・メディアのデータを AI 搭載分析ツールに投入することも可能です。結果的にさらに多くのデータへのアクセスが可能になるため、より的確な意思決定が行えるようになります。

複雑なデータも素早く分析

AI は、大規模なデータセットを迅速かつ正確に分析し、パターンを検出して、インサイトを導き出します。さらに、並列処理が可能なので、比較的大きなワークロードは細かいパーツに分割し、各パーツの作業を「並列」または同時に完了することができます。その結果、データセット全体に対し線形アプローチを使用するシステムに比べ、計算処理が時間が短縮されます。

AI システムは、グラフィックス処理ユニット (GPU) を使用するため、複雑な計算を通常のプロセッサよりも速く実行できます。つまり、企業は複数のビジネス・アプリケーションのデータを統合させ、AI が生成したインサイトをリアルタイムで取得できます。

適応力の高さ

AI モデルのパフォーマンスを上げるために、目に見えるトレーニングを実施する必要はありません。AI は、パフォーマンスの精度を自身で向上できるからです。つまり、時間の経過とともに、より多くの価値が提供されようになるということです。AI は、勤勉で集中力のある社員と同じで、日々成長するのです。

予測インサイトで賢明な判断

AI システムは、これまでのパフォーマンス・データを分析し、現在の結果と比較した後、この情報を使って、業務のパフォーマンスを向上させる方法を提案します。

例えば、AI を使ってこれまで売上実績データを分析した後、現在の実績データと売上目標を AI に提供します。システムは、提供されたデータを使って、売上目標を達成できそうなのかを示すことができます。また、目標を期限内、もしくはより早く達成するために実施するべき修正点を提案することもできます。

AI にアドバイスを求めるか否かに関係なく、AI によって生成されるデータを活用することで、お客さまのビジネスはより強い立場に立つことができ、将来の需要や顧客の要求に合わせたソリューションの構築が可能になります。

AI と従来のビジネス インテリジェンスの比較

機能従来の BIAI 搭載のBI
データ分析手動。記述が中心自動。予測やアクション提起
データ統合制限有り。手動で実行BI エンジンが別システムのデータを自動的に取得
コスト労働集約型。高いコストサブスクリプション・ベースの料金設定のため比較的安価
ユーザー・エクスペリエンス表、グラフ、シートを複数画面に表示中央コンソールが分析ツールを自動表示
時間手動プロセスのため時間を要するコンピューターによって自動的にインサイトが生成されるため、比較的速い

AI の用途は創造・分析・機能領域など多岐に渡りますが、ここでは、記述的分析、予測的分析、処方的分析の 3 つの分野における BI 分析の方法を見ていきます。以下に、それぞれの仕組みを解説します。

記述的分析 (Descriptive Analytics)

AI システムが「何が起きたか」を説明するのが、“記述的分析”です。例えば、AI を搭載した記述的分析ソリューションでは、以下が可能です。

  • 過去データの要約
  • 過去データの解釈
  • データ全体における傾向・パターンの特定

このように、AI は非常に複雑なデータセットであったとしても、それを解釈して簡単に理解できるよう説明できます。例えば、AI 搭載の BI ツールを利用して、年間の売上推移の傾向の要約を作成したとします。この要約は分かりやすい言葉で解説されているため、プレゼンテーションでも個別の会議でも、そのまま使用することができます。

このような強力な記述的分析ツールの 1 つが LANSA BI です。LANSA BI では、標準的なレポート、ダッシュボード、スコアカードなどが準備されており、アシスト付きインサイト自動生成機能を使って、ビジネス・パフォーマンスを向上することができます。この LANSA BI のアシスト付きインサイト自動生成は、データの説明、別データとの比較も可能です。この機能を使って、中身の濃い双方向型グラフィックスを使った分かりやすい分析結果を示すことができ、記述的分析ソリューションを提供することができます。

予測的分析 (Predictive Analytics)

予測分析は、将来にある事象が発生する確率を計算します。以下は一般的な使用例です。

  • 需要の予測
  • リスク評価
  • 業務効率の向上
  • サプライチェーンの最適化

また、自然言語クエリ (NLQ) を使って、AI 分析アプリに「2025年10月に最も収益を上げる製品はどれですか?」と尋ねることもできます。ガイド付き NLQ からは、システムから「製品」「最も」「収益」といった単語が提供されます。システムは、これらをクエリ対象のデータベースのカテゴリと照合させることで、必要なデータを提供するのです。

処方的分析 (Prescriptive Analytics)

処方的分析では、将来、結果をより確実に出すために必要となる行動が提示されます。例えば、処方的分析システムでは、以下が可能です。

  • IT 企業:従業員へのプラス効果を最大限にするためには、どのヘルプセンター要員を雇用するのが良いかを提案
  • 製造業:収益目標を達成するため、年間売上目標に対して、どの製品を製造すべきか、その個数や価格の設定方法を提案
  • 保険会社:向こう1年間で高額請求によるインパクトを軽減するためには、どの企業の保険料を引き上げるべきかを提案

AI による BI 変革

AI を活用すれば、必要なアクションがインサイトとして自動生成されるため、時間を短縮し、コストも削減できるため、BI に磨きをかけることができます。

スピーディで簡単な分析

従来の BI では、データに潜むインサイトを明らかにする Excel スプレッドシートの作成に数時間、あるいは数日を要する場合がありました。AI 搭載の BI ソリューションを利用すれば、データを入力するだけで、数分後にはその出力結果を得ることができます。

柔軟なクエリ

従来の BI では、クエリ利用時に多くの制限が強いられます。AI システムによって、この制限が解放されつつあります。AI により構築された BI ソリューションを利用することで、事前に準備されたクエリに頼るのではなく、さまざまな方法でシステムに問い合わせすることができます。例えば、NLQ (自然言語クエリ) ベースのシステムでは、「昨年の利益対経費比率は?」といった質問を投げかけることができます。そして1分後には、「最も利益率の高かったのはどの製品ですか?」と尋ねることができるのです。

BI 参入の障壁を軽減

AI により BI システムの構築方法が進化しているため、構築プロセスが非常に簡単なツールも出ています。特にローコード・ツールを使用することで、より多くの社員が BI ソリューションを構築できるようになります。例えば、営業担当者が、各売上の達成までに費した時間を比較することで、最も収益を生み出せる顧客を教えてくれるシステムを、クリックやドラッグ操作だけで構築できます。事前に研修を少し受けるだけで、一般社員でも IT 部門のサポートを最小限に抑えながらシステムを構築できるのです。

ビジネス・インテリジェンスにおける AI の応用

ビジネス・インテリジェンスの AI 応用範囲は無限です。以下に一般的な使用例を紹介します。

リスクおよび機会の管理

AI システムの競合分析 (competitive intelligence) を利用して、企業は競合他社により発生するリスクを監視できます。例えば、新製品の発表、価格調整、競合他社の製品に対する顧客の感想、マーケティング・キャンペーンなどをモニターできます。

こうした情報を使って、競合他社が手薄な分野で成功する機会や、相手の戦略の知識を使った別のアプローチを見つけ出すことが可能になります。

非効率箇所を検出し、ソリューションを提示

AI を使って、物理システムのデジタル・レプリカを作成し、その動作をモデル化できます。その後、処方的分析を行うことで、効率向上のための方法が提示されます。

例えば太陽光エネルギーを活用した自動車の場合、AI システムを使って、ソーラーパネルが異なる運転条件下で生成するエネルギーをモニターできます。その後、ベスト・パフォーマンスを得るために最適なソーラーパネルのサイズが国内の地域別に提示されます。

インテリジェント・プロセス・オートメーション (IPA) の活用

インテリジェント・プロセス・オートメーションを利用することで、反復または定型のタスクの実行時に必要となるリソースが削減できます。例えば、ドキュメント・インテリジェンスを使用すれば、AI システムが複数の PDF 文書からインサイトやデータを抽出します。この抽出されたデータを使って、データ入力プロセス (フォームの記入やスプレッドシートの入力など) を自動化できます。これにより、BI システムで同様の文書を作成・使用する時間を大幅に削減できます。

サプライチェーン管理

AI を活用したビジネス・インテリジェンス戦略では、サプライチェーン・データの外れ値や異常を検出できます。この情報をハイライト表示することで、問題の特定や是正が可能となり、出荷やフルフィルメント (商品が顧客の手に届くまでの一連のプロセス) のコストに甚大な影響を与える前に、事前に対応することが可能になります。

また、サプライチェーンで AI を利用することで、在庫が残りわずかな場合にシステムから自動的に通知を送信したり、材料の最も効率的な出荷方法の概要を取得することも可能になります。例えば、ある商品をロサンゼルスからニューヨークへ1週間以内に輸送する必要がある場合、最も費用対効果の高い輸送経路を割り出すことができます。

社員の生産性向上

AI 搭載の BI ソリューションは、社員データを分析し、これまでのパフォーマンスの変動を追跡できます。例えば、ある社員のパフォーマンスの低下を認識し、どのような種類のタスクで苦労しているのかを提示してくれます。このような情報を利用して、励ましに利用したり、研修の提供、必要に応じて休憩を提案したりすることができます。

ダイナミックな価格設定

AI を活用すれば、販売促進のために、すべての顧客に同じ割引を提供する必要がなくなります。その代わり、顧客の購買パターンをもとに個別の商品の価格を決定する AI モデルを作成できます。また、AI を使って、前年または前四半期における顧客の取引データをもとに、割引率を割り出すことも可能です。

さらに、価格の調整をその日やその週の終わりまで待つのではなく、需要に応じて AI システムがリアルタイムで価格を変更することも可能です。

より正確かつ自動化された不正検出

不正行為の検知は、経験豊富で熟練した社員であっても簡単なものではありません。一方、AI 搭載のシステムは、不正なフォームや支払い等のパターンを調査し、別の取引で同様の特性が見られた場合に自動的にフラグを立てることができます。この作業は (数時間ではなく) 数分で完了し、この不正アラート・データは CRM、ERP、またはその他のソフトウェアに自動的にフィードされます。

BI で AI を利用する際の課題

このように多くのメリットがある一方、BI でAIを使用する際の課題がないわけではありません。例えば、以下のような課題を克服する必要がある場合もあります。

  • データ品質:AI搭載ツールによっては、クリーンで一貫性のあるデータがなければ、実用的な結果を生成することができない場合があります。
  • コスト:AI を活用した BI ソリューションは、高価な場合があります。また、導入だけでなく、その後の維持費がかさむ可能性もあります。
  • 専門知識:一部の AI 搭載 BI ツールでは、かなりの専門知識がなければ、要件を満たす結果を得ることができません。

まとめ

AI は BI の素晴らしいパートナーになることができます。それは、AI はデータを分析し、将来起こる可能性が高い事象を予測し、ビジネス・パフォーマンスを最適化する方法をアドバイスできるからです。このように AI システムは、例えば、リスク管理、人事やその他リソース最適化のための意思決定、ビジネスが厳しい局面にあり難しい決断をリアルタイムで下す必要がる時などの状況下におけるプロセスを合理化してくれます。

LANSA BI は、AI 搭載のビジネス・インテリジェンスを提供し、組み込み分析、NLQ、BI ダッシュボードを連携させることで、価値あるインサイトを引き出します。お客さまのビジネス・インテリジェンス戦略において LANSA BI を活用する方法について詳しく知りたい場合は、ランサ・ジャパンまでお問い合わせください。

参考文献:

Speed, efficiency, and accuracy: How AI is supercharging critical document analysis finance.yahoo.com/news/speed-efficiency-accuracy-ai-supercharging-164507263.html?

Lawton, George. “Descriptive Analytics.” WhatIs, 10 Jan. 2022, www.techtarget.com/whatis/definition/descriptive-analytics.

What Is Predictive AI? | IBM. 12 Aug. 2024, www.ibm.com/think/topics/predictive-ai#:~:text=Predictive%20AI%20is%20sometimes%20confused,what%20is%20likely%20to%20occur.

Ibm. “Prescriptive analytics.” What is prescriptive analytics?, 8 Nov. 2024, www.ibm.com/topics/prescriptive-analytics.

“Dynamic Pricing: What It Is and Why It’s Important | HBS Online.” Business Insights Blog, 10 May 2024, online.hbs.edu/blog/post/what-is-dynamic-pricing.

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