ローコードはバックログ解消の救世主?

IT のバックログは長年の間に増える一方で、近年世界で起きている様々な出来事の影響により、状況はさらに悪化しています。

多くのローコード・プラットフォームでは、一般の人によるアマチュア開発者を活用することで、プロの開発者にかかる大きな負担が軽減できると宣伝しています。実際、プラットフォームによっては、アマチュア開発者によるプロジェクトを推進することを勧めているところもあります。つまり、アプリケーション開発の大部分を各部門のスーパー・ユーザーに委ねるというものです。アマチュア開発者には開発経験がほとんどないものの、ローコードは簡単に習得できると言うのが売り文句のため、理論上では、スーパー・ユーザーが企業レベルのアプリケーション開発方法を習得でき、IT 部門を補完できるというのです。

しかし、アマチュア開発者を活用することで、バックログが本当に解消されるでしょうか? 単に業務を他の部門に移管するだけで、その他の部門でバックログが発生するのではないでしょうか? 例えば、IT 部門では、アマチュア開発者をサポートするという責任が追加され、それまでにはなかった追加業務が発生します。このような状況で、アマチュア開発者の活用が、バックログの解消に本当に役立つと言えるでしょうか? また、アマチュア開発者を活用したアプリケーション開発手法は、長期的なビジネス・ソリューションとして有効なのでしょうか?

この 2 つの質問に対する私の答えはどちらも「ノー」です。これからその理由を説明したいと思います。

「アマチュア開発者による補完」に潜む欠点

  • 無駄を無くし、すでにスリム化された部門に追加業務が増える。
  • アマチュア開発者のトレーニングやメンテナンスに会社の貴重なリソースを使うことになる。
  • IT 部門はアマチュア開発者をサポートしながら、同時にアプリケーション開発を行わなければならない。
  • 各部門で個別に開発されたアプリケーションは、他の部門、もしくは企業内の別のソリューションと一致しない可能性がある。
  • 類似アプリの重複が発生する可能性がある。(例: 4 部門がすべて個別に連絡先アプリを持つ)
  • 短期的な解決策のため、長期的な持続可能性が考慮されていない可能性がある。

COVID-19 の発生以来、企業はあらゆる部門で可能な限りの業務のスリム化をせざるを得なくなっています。結果、パンデミック以前と同等、あるいはそれ以上の仕事を、少ないスタッフでこなすことになります。人事、経理、カスタマー・サービスなどのチームはすでにスリム化されているのに、さらに多くの仕事を課すことが、ビジネスで通用する選択肢なのでしょうか?バックログを別の部門に移すことが、実際の収益に貢献するでしょうか?最良の解決策は、業務を別の場所に移管せずに、IT バックログを軽減することではないでしょうか?

現在のビジネスが直面する真の課題

私が中堅企業の IS マネージャーだった頃、パンデミック発生の随分前から、市場の競争力を維持すべく、すべての部門で業務のスリム化が図られていました。ある時、文書管理のソフトウェア・パッケージが購入され、全部門にチャンピオンと呼ばれる複数の担当者を置くことが目標となりました。当時、IT/IS のバックログはすでに手に負えないほどの量に増大しており、多くの部門ではすでに人手不足の状態でした。このような状況で、チャンピオンを育成する時間を確保するのは、ほぼ不可能でした。さらに、このチャンピオンに任命された社員が社内で異動したり、退職したりすると、貴重な会社のリソースを使って別の社員を再教育しなければなりませんでした。新しいアプリケーションを開発する傍らで、サポート、トレーニング、メンテナンスを行うのは大変なことでした。このように過重なストレスを抱えた各部署に、アプリケーション開発を担当してもらうなどということは想像さえできない状況でした。こうした問題に対処できるだけの十分なリソースを持つ Fortune 500 の一流企業では状況は違うとは思いますが、多くの中小企業には、余分なリソースなどありません。ですから、競争社会の中で優位な立場を保つ、もしくは獲得するためには、利用可能なリソースを最大限に活用する必要があります。

業務を移管しても、依然残るバックログ

多くの場合、アマチュア開発者は開発経験が豊富という訳ではありません。このようなアマチュア開発者には、アプリケーション開発のためのツールだけではなく、アプリケーション開発のベストプラクティス、会社の標準化、また、会社のデータにアクセスが必要な場合はデータベースの理解などのトレーニングが必要となります。各部門はすでに人手不足に悩んでいるのに、独自のアプリケーション開発を求められ、新しいツール、テクノロジー、開発コンセプトについて、社員研修のために貴重な時間を確保しなければならないという状況が発生してしまいます。しかも、日常の業務はこなしつつ、同時にアプリの開発という新たな挑戦課題に挑まねばならないのです。

もちろん、企業の状況にもよりますが、アマチュア開発者を活用したとしても、単に業務やバックログを移動させているにすぎない場合があります。これでは結局、根本原因である IT バックログは解消できません。

ローコードの落とし穴を避けるには

ローコードとは、従来の 1 行ずつ書くコーディング手法に比べて、短時間でアプリケーションを作成できるソフトウェア設計手法のことです。ローコード開発プラットフォームでは、開発者は従来の言語開発のように各要素を手作業でコーディングする必要がないため、ユーザー・エクスペリエンスやビジネス・プロセスに集中することができます。

「ホワイトペーパー」には、"モデル・ベース" と “言語ベース" という、ローコードの 2 つのアプローチが説明されています。また、一般のアマチュアが開発者になる場合の重要なポイントについても説明されています。

開発者の満足度と生産性を維持しつつ、プロジェクトの納期を守り、コストを抑えるための効果的な方法も学ぶことができます。

プロセスを一番分かっているのはユーザー

ユーザーが使いやすく、効率的なアプリケーションを設計するためには、エンド・ユーザーの意見を聞き、協力しあうことが重要なプロセスとなります。プロの開発者がユーザー・エクスペリエンスを形成する際は、エンド・ユーザーに頼らざるを得ません。かと言って、エンド・ユーザーが自分でアプリケーションを設計する必要はないのです。これは、アプリケーション作成の効率的な手段ではないからです。経済効率の原則は、アプリ開発にも当てはまります。アマチュアの人を開発者にして IT の状況を改善しようとすると、他部門にコストがかかることを避けることはできません。ユーザーに開発を強要するのではなく、ユーザー・エクスペリエンスの向上を手伝ってもらうようにしましょう。

ソリューション開発者によるローコード活用

ただし、プロの開発者だけがローコードを使ってアプリケーションを開発するべきだと言っているわけではありません。アマチュアの開発者が企業レベルのアプリケーション開発を行うことに疑問を抱いているのです。アプリケーション作成を考えているソリューション開発者の皆さんには、ぜひローコードを試していただきたいと思っています。学生、教師、医師、会計士、経営者など、アプリケーションを作成したと思っている人なら、誰でもローコードを使って開発することは可能です。

従来のプログラミングに比べると、ローコードは参入障壁が低く、アイデアを持つ人と開発知識を持つ人のギャップを埋めることができます。プロの開発者がローコードを使えば、企業のアプリケーション開発の効率と成果を高めることができます。企業以外の環境にいるソリューション開発者がローコードを利用すると、自分のアイデアを実現できるようになるのです。

IT バックログの解消方法

  • プロの開発者に、素早くアプリケーションが作成できるツールを提供する。
  • エンド・ユーザーと IT 部門が協力し合い、初期の段階から最高のユーザー・エクスペリエンスの構築を目指す。
  • アプリケーション開発のプロセスを向上させることで、アプリケーションのメンテナンス・コストが削減できるように努める。

IT バックログと開発者不足を解消するために、他の部門に負担をかけるべきではありません。また、業務を移管したり、企業のアプリケーション開発にアマチュア開発者を活用することに焦点を当てるべきではありません。大切なのは、プロの IT 開発者が、今までよりも効率的にアプリケーションを作成できるようにすることです。

Visual LANSA が提供する IT バックログの解消

  • 最大 10 倍の速さでアプリケーションが作成できます。
  • エンド・ユーザーと協力することで、修正・書き直しの必要性を減少できます。
  • 保守コードが少なく、すべてのコードが包括的であるため、保守コストが削減できます。
  • Visual LANSA の開発者は自然とフルスタックの開発者となります。

Visual LANSA ローコード・プラットフォームは、IT バックログの原因そのものに対処し、解決していきます。Visual LANSA では、ローコード手法を活用することで、開発者が効率的なソリューションに焦点を当てることができ、従来型のコーディングに比べて最大 10 倍の速さのアプリケーション開発が可能です。Visual LANSA 開発者は全員がフルスタックの開発者であり、どのアプリケーションもあらゆるデバイスに対応します。つまり、1 つのアプリケーションをコーディングするだけで、すべてのデバイスで実行可能なのです。また、Visual LANSA にはコラボレーション・ツールが組み込まれているので、ユーザーは最初から参加することができ、修正や書き直しを減らすことができます。複雑なソリューションや統合であっても、Visual LANSA アプリケーションはすべて IDE 内で開発できるため、開発やメンテナンスの時間も大幅に短縮できます。他の部門に作業負荷を転嫁することなく、IT バックログを直接削減できる解決策がVisual LANSA なのです。

実在する課題に集中

IT 管理者および CIO の皆さんには、アマチュア開発者を活用したエンタープライズ・アプリケーション作成のメリットとデメリットを真剣に比較・検討していただきたいです。アプリケーション作成という短期的な需要の方が、プログラムの維持にかかる長期的なコストよりも重要であるという場合もあるかもしれません。コストやリソースの配分が問題ではない場合もあるでしょう。もしかしたら、アマチュア開発者を使うことが道理にかなっている特殊なケースもあるかもしれません。ただし、焦点を当てるべき本当の問題は IT バックログの解消であるということを忘れないでください。