サプライチェーンと物流のDX(デジタル・トランスフォーメーション)

サプライチェーンに関するニュースはほぼ毎日のように報道されています。スエズ運河の封鎖事故、パンデミックによる中国の主要港閉鎖(英語)などは記憶に新しいと思います。このようなニュースでよく耳にするのは、「この惨事が世界中のサプライチェーンに悪影響を及ぼしている」ことです。

最近では、タオルなどの生活必需品だけでなく、シリコンチップや部品等のサプライチェーンの遅れも聞かれるようになりました。

実際サプライチェーンは非常に複雑なため、Covid-19の影響を受けて、その脆弱性の多くが露呈された形です。

私の3回目のブログとなる今回は、サプライチェーンと物流のデジタル・トランスフォーメーション(DX)について深く掘り下げたいと思います。まず、サプライチェーンと物流分野におけるDXの意味を考えてみましょう。

ご存知のように、多くの組織がDX戦略を加速させる必要があることを認識しており、その過程において、最善のツールやメソッドを活用しなければならないことも承知しています。

これまでのブログでは、サプライチェーンにおけるDXの重要な柱を紹介してきました。初回のブログでは、サプライチェーンにおけるイノベーションのためのローコードに焦点を当てました。このブログでは、LANSAを含むローコード・プラットフォームの活用が、ステークホルダー (利害関係者) の生産性を変革するきっかけになることを紹介しました。これは、DX推進において最も重要となる要因の1つです。

2つ目のブログ (英語) では、サプライチェーンのオムニチャネル・ソリューションを利用した、レガシー (古い技術) およびERPのモダナイゼーションに焦点を当てました。本来DXとは、長く続く伝統的な文化や昔からの手動による作業パターン、古いサイロ、(新しい技術の登場にも関わらず) 今なお使われ続けている (ERPを含む) 記録システムなどをモダナイズすることを意味します。この分野においても、LANSAは最新のERPシステムやDXプラットフォームを提供することで、サプライチェーンの革新を促進します。

サプライチェーンのデジタルツイン

デジタルツイン (デジタル空間上の双子) とは「現実世界のエンティティ (実体) やシステムをデジタルにより表現したもの」 (ガートナー(英語)用語集) を指します。つまり、すべてのエンティティはデジタルツインで再現することができるのです。これには、物理デバイス、接続デバイス、人、組織、そしてもちろん、サプライチェーンといったプロセスやバリューストリームも含まれています。

サプライチェーン (SC) はバリューストリームの1つです。サプライチェーンのデジタルツインを構築することで、このチェーン全体を完全に可視化できます。これにより、ステークホルダーは、複雑で入り組んだサプライチェーンのあらゆる段階においてドリルダウンでき、二次下請け業者の詳細なども確認することができるようになるのです。

SCデジタルツインはリアルタイムであることが理想的です。また、アニメーションやモニターなどのビジュアルが含まれることも望まれます。サプライチェーンのデジタルツインによって、複数層のサプライヤー・ネットワークや商品・部品の流れが示されます。

また、ボトルネックになっている箇所を特定したり、倉庫、部品の輸送、配送センターの状態を表示することも可能となります。

デジタル・コントロールセンター

サプライチェーンのデジタルツインは、デジタル・コントロールセンターの起点としての役割を担うことができます。このコントロールセンターでは、監視、ドリルダウン、アクション(デジタル化されたルールやプロセスを指定して実行)を実行することで、ボトルネックや潜在的な危険が存在する事象など、サプライチェーン全体のパフォーマンスに影響を与えるあらゆる問題を解決することが可能です。

サプライチェーンのような複雑なアプリケーションに信頼性の高いデジタルツイン導入することには、多くの利点があります。インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(英語PDFファイル)によると、デジタルツインは、情報のサイロ化を軽減できるとしています。このことは、メーカーから顧客までのサプライチェーンの最適化にとっては、重要な鍵となります。

物流とサプライチェーンを追跡するモノのインターネット (IoT)

私たちは、以前にもましてインターネットで繋がれた世界で生活してます。モノのインターネット (IoT)(英語) (産業用IoTと消費者用IoTの2つの側面を持つ) は、デジタル・トランスフォーメーション (DX)(英語)の最も重要な柱の1つです。この進化により、物流とサプライチェーンを管理できる革新的なアプローチが可能になりました。ここで言う物流(英語)とは、1つの組織内における、製品の流通と編成を指しています。つまり、倉庫、物流、輸送も含まれており、「サプライチェーン(英語)」全体の一部と位置付けられています。

すべてを繋ぐインターネット

IoT/IIoTを活用することで、原材料、部品、製品が流通倉庫に到着するまでの流れを可視化し、確実な追跡も可能となり、ビジネス価値を高める重要なユースケースとなります。これは、特にエンド・ツー・エンドのサプライチェーンのバリューストリームを分析・自動化する際には重要となります。

部品や部品が入った箱の数だけでなく、部品の移送、物流の追跡までもが、インターネットで接続された輸送や物流を通じて確認することができるのです。IoT/IIoT応用分野のトップ・ユースケースにおいて、デジタル規範メンテナンスの次に来るのは、おそらくサプライチェーンのDXでしょう。実際のところ、メンテナンスのための交換部品は通常サプライチェーン・プロセスも関係するため、この2つのユースケースには相互関係があると言えます。

サプライチェーンのためのブロックチェーン

エンタープライズ・アプリケーション分野における応用の典型がサプライチェーンだと言えるでしょう。興味深いことに、サプライチェーンはブロックチェーン技術にとって理想的なユースケースでもあります。ブロックチェーンは、複数の主要カテゴリーのやりとり、つまりフローを活用することで、サプライチェーンの優れたバックボーン(英語)となることが可能です。契約フロー、物流(商品や材料の移動)フロー、文書フロー、そしてもちろん、暗号通貨の基盤である金融取引フローなどもその例です。

デジタル化が進んだ企業では、部品、製品、サプライヤー、倉庫、在庫、文書、トレース、金融取引のマスターをブロックチェーンに保存し、効率的かつ最適化されたパイプラインとして機能させることができます。非集中分散型のブロックチェーンでは、すべてのノードに同じデータが保存されます。このデータには、複数層のサプライヤーから始まり、部品の動き、倉庫への部品納入、そして最終的に顧客に配送されるまでが含まれます。ブロックチェーンには、サプライチェーンの複数層間に関わる組織、運用、および業務に関するすべてのデータが保存されています。

ブロックチェーンの実例

例えば、2017年にスタートした「MediLedger(英語)」プロジェクトがあります。このプロジェクトでは、特に米国の医薬品サプライチェーン安全保障法 (DSCSA: Drug Supply Chain Security Act) に特化したブロックチェーンが活用されています。医薬品検証のマスターとしてのブロックチェーン利用は、MediLedgerが取り組んでいる主な領域の1つです。

上の図は、FDA (アメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration) がDSCSAプロジェクトで試験的に行った参加企業間におけるやり取りが示されています。参加企業は非公開ノードで互いに通信ができ(ピアツーピア)、コンセンサス・ノードを使ってデータ共有も可能となります。

ローコード・マスターハブを使ったサプライチェーンのDX

前述した通り、これまでの2つのブログでは、レガシー・アプリケーションやERPのローコード化、そしてオムニチャネル・モダナイゼーション(英語)について説明しました。第2回のブログでは、サプライチェーンのマスターデータ戦略の必要性についても触れました。事業単位、アプリケーション、バリュー・ストリーム間などで共通する1つの「真」が存在しないという問題はあらゆる企業が抱える問題です。

同じエンティティ(部品、サプライヤー、倉庫、輸送、製品など)に関する情報に一貫性がない主な理由としては、組織、事業単位、アプリケーションのサイロ化があります。ただ、マスターデータを持つにあたっては、次のような複数の問題が存在します。

  • データの質が悪く、整合性が無い状態だと、不適切かつ誤った決定を下す恐れがあり、危険を冒す可能性がある。
  • 複数のサイロ化されたシステムには、同じアイテムに対して矛盾する情報が含まれることも多いが、この異なる種類のデータの一貫性と高品質を維持しようとすると、多くの時間や労力を費やすことになる。
  • 合併や買収後に、顧客や製品に関する情報に関して、組織全体に通じる1つの「真」を持たせるにも、データに一貫性がないという問題が存在する。

ローコードによるDXソリューション

幸い、サプライチェーン(およびその他のエンタープライズ・アプリケーション・ドメイン)におけるエンドツーエンドのデータ統合のニーズに対応でき、同時にローコード開発も加速させることができるDXソリューションは存在します。

LANSAの信頼性の高いプラットフォームとソリューションを活用することで、ローコードによるエンドツーエンドのアプリケーションを効率的に、かつ短時間で構築することが可能です。これにより、サプライチェーンのステークホルダーは、様々な記録システムを統合できるとともに、LANSA独自の最新のサプライチェーン向けERPやその他のアプリケーションも活用できます。さらに、最も重要なのは、プラットフォームやツールを追加して不必要に複雑化させるのではなく、デジタル変革のハブとしてのサプライチェーン (とその他関連企業) 用のマスター・データとして、あらゆる目的を達成できるということです。

LANSAのプラットフォームには、一般的なビジネス・ルールとともに、データ整合性を保つための高度なビジネス・ルールも組み込まれています。さらに、ローコード・サービスという性格上、ほとんどコーディングをすることなく、API(RESTなど)の利用・生成が可能です。また、すべてがモデル駆動型で、プラットフォームやツールは使いやすいです。